欠け等で諦めていた器が生き返った上、自分だけの器になった気がして一層愛着も高まるという金継ぎ。
壊れたものを直して使うことは、サスティナブルな選択とも考えられ、海外でも”Kintsugi”として、注目を浴びているようです。
ひび、かけ、割れ等で壊れてしまった器を、漆(木の樹液)を使って修復する伝統的な技法「金継ぎ」。「金継ぎ」という名前ではありますが、ほぼ漆で修復し、金は仕上げの時のみに使います。今では、漆ではなく合成樹脂を使った簡単なキットも発売され、ここ数年ちょっとしたブームになっています。
金継ぎの最大の魅力は、壊れた箇所を隠すのではなく、装飾としてあえて見せることで、唯一無二のデザインとなるところ。新品にはない独特の味わいが感じられ、より一層愛着が生まれます。
諸説ありますが、「器を漆で継いで直す」という修理方法自体は、実は縄文時代からあると言われており、出土品から漆がついた槍や器が見つかっているそうです。
そして今のような金継ぎ技術が誕生したのは、室町時代のお茶の文化から安土桃山時代頃に始まったとされています。茶の湯が盛んだった当時、茶器が非常に高価なものだったので、何とか修繕して使い続けたい、という思いから生み出されたのかもしれません。
金継ぎには、大きく分けて ①簡易金継ぎ ②伝統金継ぎ/本漆金継ぎという2種類あります。
ざっくり言うと「”天然の漆”を使っているか否か」というのが判断基準で、①は瞬間接着剤などのケミカルな素材を使い、②は自然由来の素材のみで行われます。それぞれにメリットとデメリットがあるので、自分にあった方法で行ってください。
今回体験するキットは、新うるしという植物性の合成樹脂塗料を使用します。かぶれにくく、漆と似た性質をもち、本物の漆を使った方法よりも簡単に金継ぎが行えます。材料は、新うるし・金粉・うすめ液・耐水やすり・との粉(石を砕いた粉末)・わりばし・小さめのお皿・ストローを用意しました。道具や材料は少なく、ホームセンターなどで購入できるものが多いです。
最近では、家で手軽に取り組める「金継ぎキット」が、各メーカーから販売されています。
パテは、との粉とうるしの割合を6:4で、耳たぶぐらいの柔らかさになるまで混ぜます。欠けた部分にパテをのせ、器の形に合わせて形成するのですが、乾燥したらやせるので少しこんもりのせるのがポイントだそう。のせ終わったら、1週間ほど置いて乾燥させます。
★パテは小麦粉やお米等、自然な素材を使って作ることもできます。
★パテを塗る前に、塩分・油分・ススなどで汚れた部分があると、漆が固まりにくくなるので、器をよく洗い、そしてよく乾燥させてから始めてください。
パテを塗った約1週間後、乾いているのを確認して次のステップです。
耐水やすりに水をつけ、凹凸になっているところをやさしく磨きます。パテのまわりを削って傷つけないように少し慎重に。なかなかうまく削れず、少し苦戦しましたが、なんとか表面がつるつるに。磨きすぎないように注意してください。
磨き終わったら、ついに金粉の出番。小さめのお皿に、金粉と新うるしを1:1で混ぜ、色を作ります。そこにうすめ液をポトリと滴らし、さらに混ぜたら欠け部分に塗り重ねます。仕上げの作業で“金粉を塗る”ということに緊張感がありましたが、意外と垂れないので塗りやすく、一番楽しい工程でした。
塗り終わったら、2日~2週間程度自然乾燥させ、ついに完成です。
最後にひび・割れの簡単な金継ぎ方法をご紹介します。
●ひび・・・①ひびの隙間を埋めるように、新うるしを塗ります。②約1日後、耐水やすりで表面を磨く。③金粉を使い、色を塗り重ね、自然乾燥後完成。
●割れ・・・①強力瞬間接着剤で、器を貼り合わせる。②耐水やすりで表面を磨く。③塗ります。②約1日後、耐水やすりで表面を磨く。
お気づきの通り、ひびも割れも工程はほとんどかけと同じ。はじめて見る材料も多く、慎重になりますが、一度やってみれば今後は簡単にできそうです。また陶器や磁器だけでなく、ガラス製品にも応用可能。身の回りのものが壊れてしまっても修復して、また愛す。そうした、「長く使い続けるスタイル」を金継ぎは教えてくれました。